第三者意見

本レポートについて、「阪神高速事業アドバイザリー会議」座長であり、交通インフラ分野の第一人者の正司氏に第三者意見を執筆していただきました。「阪神高速事業アドバイザリー会議」とは、専門知識を有する外部有識者で構成される第三者委員会です。日頃から当社グループの経営改善や事業全般について、常に公正な立場で助言をいただいています。

コミュニケーションツールとしてのCSRレポート

神戸大学 名誉教授 正司 健一
神戸大学 名誉教授
正司 健一

関西経済同友会代表幹事の生駒京子氏とのトップ対談で吉田社長が紹介されているように、阪神高速道路は1日約70万台の車が利用し、阪神間の物流の約半分を担っている関西都市圏の大動脈です。それだけに、このCSRレポート2022を通じて、阪神高速グループがその経営理念である「先進の道路サービスへ」のもと、地道な取り組みを着実に積み重ねていることがわかり、とても心強く、頼もしく感じることができました。これからも、都市高速道路の提供を基幹事業とする自らの強みと存在意義を基盤にして、まさに「安全・安心・快適なネットワークを通じてお客さまの満足を実現し、関西のくらしや経済の発展に貢献」し続けていってもらいたいと大いに期待しています。

このレポートには、阪神高速グループの多岐にわたる活動が網羅的に収録され、いろいろなことが理解できる、読み応えのあるものになっています。もちろん、押さえるべきと考えられる項目が数多くあることは理解できますが、そのため文字量・情報量はかなり多くなっています。また、重要な項目ほどその内容は継続的なものとなり、毎年、その内容はほとんど変わっていない印象を与えてしまう可能性があります。さらに、数多くの項目を扱うために、専門的な内容を読者に十分理解できるように、丁寧に説明するだけのスペースを確保するのが難しくなっているかもしれません。この結果、グループの地道な改善への積み重ねやその難しさを過小評価されることにつながってしまうとしたら、それは困ったことです。阪神高速グループと読者とのコミュニケーションツールとして、改善の余地はないか、常に点検してもらいたいと考えます。

実際には過去のものと比べて、読者に目を通していただくために改善を図った努力の跡が各所にみられます。今回加わった「ステークホルダーダイアログ」は興味深い企画でした。一方で、例えば、中期経営計画2020~2022の達成状況のページでは、グラフに情報を読み解く一助となるコメントがあればさらにわかりやすくなったのにと感じました。また、価値創造のプロセスで「経営資源(非財務資源・財務資源)」と表記され、CSRマネジメントのCSR基本方針では「人的・物的資源やノウハウ」とあるように、読者を戸惑わせるかもしれない表現が、一部に残っているように、評者には思えます。

より高質でわかりやすい情報提供に向けて、読者目線にたって内容、そして用語を常に再精査するとともに、例えば、あえてレポートで紹介する項目を絞ることにして、より理解を深められるような余裕を生み出したり、より詳細な情報についてはホームページなどへ誘導することで対処するといったことも考えてはどうかなどと、愚考したところです。

ご意見を受けて

常務執行役員 上松 英司
代表取締役兼専務執行役員
上松 英司

正司先生には、阪神高速グループの取り組みや本レポートについて、貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。

2021年度も、新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けた一年でありましたが、社員一人ひとりが、「関西のくらしや経済を下支え」する使命を強く自覚し、高速道路サービスの提供を滞ることなく事業継続するとともに、2年間に渡った環状線リニューアル工事の完工、DX戦略の策定など、サステナブルな未来に向けての大きな成果を得られた一年でもありました。

2022年度は、グループスローガンとして「先進の道路サービスへ -明るく 楽しく 一歩前進-」を掲げました。変化が激しい現代社会において、「先進の道路サービスへ」を進むべき道を判断するにあたっての基軸・羅針盤として引き続き社員全員で共有するとともに、関西の発展のため、人類全体の「いのち輝く未来社会の実現」のために、明るく楽しく、歩を前に進めていきたいと思っています。

本レポートにつきましては、今回「双方向コミュニケーション」として、現代社会の重要課題である"脱炭素"をテーマとした「ステークホルダーダイアログ」を新たに加え、「インタビュー」や「Voice」などコラム記事の充実により、より親しみを感じていただけるレポートとなるよう改善に努めました。一方で、正司先生からご指摘いただいたとおり、情報量や表現などでさらなる改善・工夫が必要であることも強く認識いたしました。改めて、読者目線で本レポートを点検し、より興味深くわかりやすいコミュニケーションツールとして進化を図り、ステークホルダーの皆さまのニーズや期待に応えてまいる所存です。