特集 ケニアの大地で見つけた新たな可能性(4/5)

海外に出て、初めて分かることがある。

人口330万人を擁するケニアの首都ナイロビ。多くの国際機関が本部や代表部を置くこのアフリカ有数の大都市が、今の岡本の活動拠点だ。関係当局の折衝や調整、地域に足を伸ばしての現地調査。業務は多岐にわたるが、すべての時間がゆったりと流れる中で、じっくりと腰を落ち着けて仕事に向き合える環境がある。日本を遠く離れた異国の地での仕事ぶりを聞いた。

現地での日常を教えてください。

岡本

勤め先のオフィスは、ケニアの首都ナイロビの中心街にあります。オフィスには、私の他に数名の現地スタッフがいて、時々、日本のコンサルタントから派遣されるプロジェクトリーダー(PL)らと、一緒に仕事をしています。またオフィスを拠点に道路関係機関に出向いてさまざまな調整を行ない、課題があれば解決策をアドバイスをしたり、現場視察で工事作業の様子をチェックしてデータをまとめたり、オフィスの外で活動することも少なくありません。関係者を対象に行うセミナーで講演したり、ワークショップを開いて実技訓練を指導したりすることもあります。「道路維持管理」というと、道路の穴ぼこを埋めたり、舗装し直したり、実作業をイメージする人がいますが、チーフアドバイザはPLとともにプロジェクトをマネジメントし、指導やアドバイスを行なうのが仕事で直接、自分でスコップを持って補修するわけではありません。

ワークショップセミナーの様子

現地で仕事をしていて、いちばん困ったことは何ですか?

岡本

国や民族が違えば、当然価値観も文化も違います。日本人には当たり前のことでも、現地では当たり前ではなくなる。その違いに慣れるのには、少し時間がかかりました。例えば朝9時から会議を始めると事前に伝えていても、時間通りに全員が集まることはまれで、始まるのはだいたい10時頃(笑)。予定通りに仕事が進まなくて、最初は大いに戸惑いました。

また現地の人たちは、日本人のように働くことに喜びを見出す価値観とは少し違い、やる気を持ってもらえるような工夫が必要で、例えば会議をランチ付きの会場でセットしたり、セミナー参加者には認定書を交付して履歴書に書き込めるようにしたり、あの手この手を繰り出しました(笑)。良い悪いという話ではなく、「違い」の問題。いくら私たちが口を酸っぱくいっても相手に伝わらないことはあるし、伝わらなければ何も前に進みません。相手と同じ目線に立ち、異なる文化や価値観を理解しようと努めることが、海外で仕事をする上ではいちばん大事だと感じました。

長いキャリアの中で身に付けた知識や経験が、どんな場面で役立ちましたか?

岡本

現地の道路関係機関や工事会社の人たちは、持っている知識やスキルに限りがあって、課題が見つかっても原因を掘り下げて解決するところまでいかないことが往々にしてあります。そんな時、自分の持てる知識を総動員してスタッフに情報提供したり、少し違った視点や角度から問題提起するなどして、解決にむけた道筋をつけてあげるのが私たちの仕事です。そういう意味ではケニアに来るまでの阪神高速道路(株)の18年間の経験が集大成され、自分では意識せずとも自然にアウトプットされ、さまざまな場面で役立っています。だからこそここまで2年近くやってこれたと思っています。

建設・計画・管理を、まんべんなく経験したことが活かされたと?

岡本

道路維持管理の現場は、「例題」通りというものがありません。教科書通りにやれば解決できる簡単な問題などほとんどなくて、さまざまな要素が幾重にも絡まりあって解決が困難な「応用問題」が多いです。そこで活躍できる人というのは、実は管理の専門家というよりも、建設段階の設計や施工のことも、計画段階の考え方や思想的なことも、ちゃんと分かった総合力を持つ人です。その意味で3つの部門をバランスよく経験した阪神高速道路(株)での18年間の蓄積は貴重なものですし、それが自分の中でベースとしてあったからこそ、今回のプロジェクトにも対応できたと思っています。

工事作業の様子をチェック

逆に海外業務を通じて得たものがあるとすれば、それはどんなことですか?

岡本

例えば日本とケニアとでは道路事情が違えば、仕事をする環境も体制も違う。でも課題は、まったく同じなんです。工事の安全対策、夜間作業の難しさなど、日本の道路会社の悩みは、そのままケニアの人たちの悩みでもあるんです。その意味では、プロジェクトを通じて得た知識や教訓は、日本に帰ってから仕事をする時に、いつかどこかで生かせるに違いないと思っています。

海外を経験しないと、分からないことですね。

岡本

またケニアは、かつてイギリスの統治下にあった影響もあって、道路建設に関する基準などはヨーロッパから持ち込まれたものがほとんどです。
それに対して日本では、昔に欧米から導入されたものが長い年月の間に日本独自に発展を遂げていて、両者を比較すると必ずしも日本が先を進んでいるとはいえなく、ケニアに遅れをとっている部分もある。きっとそうした違いも、海外に出て、外から日本を眺める機会があったからこそ気付けたのだと思います。

「日本にいたのでは、決して分からない」「外に出て、初めて分かることがある」と分かったことが、いちばんの収穫といえるかもしれません。

岡本

特集 世界で活躍する阪神高速
「ケニアの大地で見つけた新たな可能性」
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