ステークホルダーダイアログ

参加メンバー(以下敬称略)

左より阪神高速道路株式会社 経営企画部 CSR推進室(取材時) 環境推進担当課長 南野 健一、同課長代理 今村 恵美子、NPO法人 いけだエコスタッフ 理事長 庄田 佳保里、同環境デザイン 佐々木 康之

プロフィール

NPO(特定非営利活動)法人 いけだエコスタッフ

大阪府池田市で、再生可能エネルギー、地球温暖化防止活動、3R、環境学習支援の4事業を軸に活動をするNPO法人。調査・研究・学習・広報・交流・実践を通じて、広く市⺠に環境保全の⼤切さを伝える事業などを⾏う。池⽥市内および周辺地域の環境保全を図り、地球温暖化防⽌に努め、持続可能で豊かな⽣活環境を実現することを⽬的としている。

阪神高速 未来へのチャレンジプロジェクト
SDGs座談会

脱炭素への想いは同じ。地球環境との共生を目指して

阪神高速グループは地球環境保全を最重要課題とし、事業を通じて地球温暖化防止や脱炭素化に取り組んでいます。再生可能エネルギーによるまちづくりを目的とした活動に取り組まれ、当社グループが持続可能な社会の実現に貢献するために実施している「阪神高速 未来(あす)へのチャレンジプロジェクト」助成対象に選出されたNPO法人いけだエコスタッフと座談会を実施しました。

関連するSDGsの目標
  • 3:すべての人に健康と福祉を
  • 7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 8:働きがいも経済成長も
  • 9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 11:住み続けられるまちづくりを
  • 12:つくる責任 つかう責任
  • 13:気候変動に具体的な対策を
  • 17:パートナーシップで目標を達成しよう
「阪神高速 未来(あす)へのチャレンジプロジェクト」とは?

市民団体による公益的な活動をサポートする阪神高速のプロジェクトです。SDGsの目標の一つである「17.パートナーシップで目標を達成しよう」で示されているように、協働により社会課題の解決を図り、地域・社会の持続的発展およびSDGs達成へ貢献します。2021年4月16日~6月23日まで募集した第1回助成では、数多くの団体から魅力ある53事業の応募があり、いけだエコスタッフをはじめとする8社が選出されました。

手づくりの小水力発電プロジェクトで"エネルギーの地産地消"を実現。

-いけだエコスタッフの普段の活動や、未来へのチャレンジプロジェクトでの取り組みについてお聞かせください。

佐々木:私たちいけだエコスタッフは、「食とエネルギーの地域内循環」をテーマに、地域循環共生圏に基づくまちづくりの活動をしています。地域循環共生圏とは、環境省が提唱している地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会形成を目指す考え方です。当団体では自立・分散型の地域循環ができるまちづくりというゴールに対して、食の取り組みでは、地域の皆さまへの草の根運動として、プラントベースレストランをオープンしました。週に1回の菜食でメタンガスなどによる地球温暖化を防止する提案です。
今回の助成対象になった小水力発電のプロジェクトは、日本四大植木産地の一つである池田市の細河地域に目をつけ、「エネルギーの地産地消」をテーマに、地域で発電して地域で消費することに挑戦する、小水力発電の取り組みです。官民連携や自治体にアクションする運動として、まずは地域創生のイベント「BOTAFES」での電力利用を目指して動き出しましたが、初動段階では実現の目途がまったく立っていませんでした。しかし、阪神高速さまの「未来へのチャレンジプロジェクト」に応募し、助成をいただいたことで本格的な実施につなげられました。
プロジェクトの流れとして、まずは地域を歩き回り、小水力発電に必要な取水口と発電場所の候補地の調査をしました。勉強しながら発電機の検討などを進めていき、自分たちで堰をつくって実験もしました。結果、無事発電に成功し、「BOTAFES」では調達した電力で充電したスマートEV(電動バイク)の試乗体験会を実施しました。細河地域には、市の防災備蓄庫や地域のシニア向けお弁当配送センターがあり、今後は小水力発電の本設置に向けた検討を進め、通常電力としてはもちろん、災害時にも役立つ24時間供給所として活用できればと考えています。

ターゴ型水車による発電

-阪神高速は、いけだエコスタッフの活動のどのような点に共感しましたか?

南野:これまでモノの地産地消はありましたが、「小水力発電によるエネルギーの地産地消」はユニークな取り組みで印象的でした。川や小水路は日本全国に数多くあるので、「小水力発電」という形でエネルギーの地産地消をさまざまな場所でできたら素晴らしいですね。

今村:大きな水力ダムがなくても発電できる点に将来性を感じます。水力に着眼したポイントを教えていただけますか?

佐々木:太陽光発電設置は以前から進めており、過去10年間のリユース品販売の売上の一部で池田市内に5基設置することができました。つまり「エネルギーの地産地消」のモデルはつくってきたのですが、単一の電源だけでは多様ではない。例えば太陽光は夜稼働させられないし、バイオマス発電やバイオガス発電などいろいろありますが、小水力に関していえば農業用水路はどこにでもあることから着眼しました。
池田市もゼロカーボンシティ宣言を出し、いよいよSDGs未来都市を目指すことになりました。この活動が脱炭素やSDGsの目標達成につながり、地域の地産地消につながると訴え続けることで、他の地域や団体からも視察が来るなど、手応えを感じています。

庄田:企業体なら当然収益を出さないといけませんが、地域団体やNPOのやるべき役割として、今回のプロジェクト助成で、ゼロを1にする作業にご協力いただけたと感謝しています。

南野:小水力発電に最適な設置場所を探す時に、地域内の数多くの場所を歩き回って調査したとおっしゃっていましたね。プロジェクトについて地域の方のご理解はいかがでしたでしょうか。

佐々木:実は私は池田市に在住していないため、知らないなら調べるしかないとの想いが上手く作用しました。小水力発電も本来であれば技術について先に考えるべきですが、私がしたことの8割は地元の人と話すことでした。関係性を築くのに時間はかかりましたが、今は応援してくれるまでになりました。それこそが、終わってみて想定していなかった一番の成果です。

今村:地域の人との対話を積み上げて成果につなげる、という部分に共感します。私たちの事業も沿線地域とのつながりが非常に大事です。地域との関係を構築した結果が実績となり、地域や地方自治体を巻き込んでムーブメントを起こされていることに熱意を感じます。応援してくれるまでになったというのはすてきなお話です。

小水力発電を設置するための候補地探し

脱炭素に向かってコツコツと。地域が快適でいられる高速道路に。

南野:阪神高速でも脱炭素に関するさまざまな取り組みを行っています。再生可能電力については太陽光発電の設備を設置し、トンネルやパーキングエリアなどで使用する電力の一部に利用しています。

また、脱炭素において阪神高速ネットワークそのものが果たしている役割として、「交通円滑化によるCO2排出量の抑制」があります。今の社会を維持するためには、物流や人の移動の面で自動車交通は不可欠です。そうであれば、できる限りCO2の排出量が少ない移動をしていただくことが地球環境のためには望ましい。車を運転する際に、高速道路をご利用いただければ、一般道と比べストップ・アンド・ゴーによる排出増も少なくなり、最もCO2の排出量が少ないといわれる時速60km〜80kmで走行できます。その結果、一般道を走行するのに比べて1年間で2.6万haの面積の森林が吸収するCO2と同じ量の排出を抑制していると試算しています。

LED照明を使用する泉大津大型専用パーキングエリア
また、会社としても脱炭素社会の実現に向けた取り組みを実施しています。道路照明のLED化や、太陽光発電の利用、電気自動車利用者の方のための充電器の整備のほか、オフィスの省エネにも取り組んでいます。小水力発電プロジェクトなどの取り組みは事例として大変参考になり、地域とともに歩みたいという姿勢は阪神高速の企業理念にも通じるところがあります。

佐々木:電気自動車の電池残量も、高速道路だと圧倒的に減りませんね。一般道よりも長く走れることを実感します。今の車には走行中のCO2排出量が表示されるものもあるので便利ですね。

今村:阪神高速ではそのほか、「循環型社会の形成」を目指した取り組みも行っていて、事業で使用するエネルギーなどの流れはフローにして把握しています。また、グリーン購入法に沿って事務用品のグリーン調達目標を100%に掲げて取り組んでいるほか、使用済みの横断幕を鞄などの製品にアップサイクル製品にする取り組みも行っています。沿道環境を改善する取り組みとしては、高速道路からの騒音を減らす遮音壁や、トンネル内部の空気を集めて有害物質を吸着し、空高く排気する換気所を設置しているほか、環境ロードプライシングといって、大型車を5号湾岸線へ誘導することで3号神戸線の環境負荷を減らす取り組みも実施しています。

次のフェーズは、まったく新しい次世代型循環する「道の駅」の完成へ。

-いけだエコスタッフが取り組む「エネルギーの地産地消」について、今後の展望をお聞かせください。

佐々木:エネルギー面では次世代型循環する道の駅をつくりたいと思っています。AIやIoTなどによる高効率なマッチングを実現させ、輸送などは多様な担い手が期待できます。またパッシブハウスという省エネルギーの建築工法で建物を建てたり、生物多様性に溢れる場所を生かした空間づくりなども実現していきたいです。

庄田:地域が賑わう道の駅にするため、地域も巻き込み、経済を回すという計画で構想を続けてきましたが、今回、池田市が地方創生の補助金を受けてようやく一歩を踏み出しました。第三者の計画任せでなく、計画が地域循環を意識したものになっているか、カーボンニュートラルな仕組みとして成立しているかを、いろいろな人が集まるプラットフォームで自分たちの意見を発信することで、この構想を実現できればと考えています。

南野:それはユニークなプロジェクトで実現が楽しみです。「地域循環共生圏」を意識したまちづくりを目指しているという特色が社会に大きくアピールできれば素晴らしいですね。

佐々木:気候変動はずっと昔からある問題です。世界規模の大きな目標としてはSDGsやパリ協定などがありますが、その他にも、2006年に発表されたスターンレビュー(英国財務省が実施した気候変動問題の経済的側面に関するレビュー)を受け、世界は一足先に動き出していたのに、日本は近年ようやくスタートしました。経済発展をしながら生物多様性を守り、金融業界もそこに投資し企業価値を見出さなければなりません。また、現在は、TNFD=生物多様性に関する財務情報も企業は開示していかなければならないというのが世界の潮流です。これで金融業界は一気に生物多様性への投資が予想されますが、日本でそれが表に出るのはおそらくもう少し先になるのではないかと予測しています。生物多様なエリアの道の駅なら、バックキャスティングしてそれらも考慮すべきだと訴えていきたいです。

今村:将来の目標に向かって今やるべきことを考えるのは、現実的ですね。カーボンニュートラルという待ったなしの課題に対して、阪神高速の環境への取り組みにも生かしていきたいです。

持続可能な社会の実現のために、「持続可能な取り組み」を考える。

南野:阪神高速はこれまで、交通事情の改善を通じて現代社会に必要不可欠な自動車交通により生じる環境負荷の低減という使命を果たしてきました。それと同時にできるだけ事業活動から排出されるCO2を減らす施策にも取り組んでいます。カーボンニュートラルの達成は国を挙げて取り組まなければならない大きな社会課題でもあり、実現に向けて阪神高速グループが取り組めることは何か、今後どのようなステップで進めていくべきかをしっかり考えていきたいと思っています。

庄田:環境問題は楽しくなければ続けられない。持続可能というのは、どれだけ良いことでも続かなければ意味がないということです。だから、いかに楽しく続けられるかは当法人の活動において大事にしていることの一つとなっています。地域の皆さんが無理のない範囲で楽しく参加し続けられる仕組みをどうつくるのか、これからも小さいところからチャレンジしていきたいと思います。

今村:持続可能な社会を目指すというと目標が大きすぎて「一体何から始めたらいいの?」となってしまいますが「小さなことから始める」といういけだエコスタッフさまの姿勢には、とても共感します。「楽しさ」ということでは、阪神高速道路はお仕事でご利用される方が多いので、いかに安全に目的地まで快適に移動していただくかということに目がいきがちですが、お客さまに楽しくドライブしていただきながら環境に貢献できることは何かを考えていきたいと思いました。

南野:夢のある明るい未来を実現するためにも、このご縁を大切に育んでいきたいと思います。