阪神高速のこだわりの技術

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「床組免震」と「制震ブレース」

検討の末、ついに「床組免震」は採用されることになった。具体的な施工方法として、道路面を支えている金属支承のすべてをすべり免震支承に取り換え、それだけでは復元力が期待できないため、積層ゴム支承を併設することが決定した。

「すべり」と「戻り」を組み合わせたと理解していいのですか?

金治

そういうことです。すべり支承のほうは樹脂製すべり材とフッ素加工をしたステンレス板によるもので、積層ゴム支承は薄い鉄板を何層も入れ込んだものです。
樹脂製のすべり支承についてはメーカーさんと一緒に新たに開発しました。ご存知のように摩擦することで、熱が生まれます。摩擦があまりにも強いと、熱で部材が溶けることもある。そういうことがないよう、熱をあまりもたず、ほどよくすべらせてくれる素材を、ということで何度も試作、実験を繰り返し、ようやくこれはというものに辿り着きました。これにより地震のエネルギーを消耗します。ゴムの固さと摩擦係数の関係については、膨大な解析を行い、最適な組み合わせを決定しました。

すべり免震支承積層ゴム支承
写真:港大橋の制震ブレース(製作時)

「床組免震」と並ぶ、もう1つの重大要素が「制震ブレース」だった。既設の長大橋に採用されるのは、世界でも前例がなかった。
「制震ブレース」とは、圧縮に弱い鉄が座屈(両端から強い圧縮力を受けて、ひしゃげるように壊れること)するのを防ぐため、「芯材」と、芯材が座屈するのを拘束する「鋼材」の2重構造になっている。また、地震の際には芯材が座屈しないで伸び縮みすることにより、地震エネルギーを吸収する。地震エネルギーは制震ブレースによって消費されるため、他の構造材に及ぶ影響を低減することができるという仕組みだ。

図:制震ブレースの設置位置写真:制震ブレース

非常に画期的なシステムですね。

写真:既設ブレースを半割にして新ブレース1本ずつ架設する
金治

斬新な設計なのですが、その時点で解析的な検討しか実施しておらず、理解を得るのに苦労しました。大きなプロジェクトだけに、時間をかけてわかっていただくしかないということで、学識者や技術者が意見を交換する技術審議会の場で話をする、学識者の方に個別に話を聞く、専門委員会をつくるなどして、理解を得るようにしました。
床組免震の免震というのは、絶縁することで地震などのエネルギーを受けないようにすること、と先ほど言いましたが、制震ブレースの場合は制震ですから、地震力を受けても致命的な破壊が起こらないようにする、すなわち地震力の伝わり方をコントロールすると考えていただくとよいと思います。
制震ブレースは、もともと高層ビルの制震技術として発達しました。なので、それが長大橋に応用できるかどうかが、議論のポイントとなりました。具体的には、ビルでは事例のない長くて細いブレースの設計、製作方法、そして防食方法が最大の課題となりました。
いよいよGoサインが出てからも、施工が大変でね。既設ブレースを取り除いて制震ブレースに取り替えるわけなんですが、取り除いた時に一時的に安全性が確保できなくなるとまずいでしょう?そこで既設ブレースを半割にして、新ブレースを1本架設し、その後残りブレースを撤去して、2本目の新ブレースを設置する工法を採用しました。
場所が海の上だけにクレーン車を用いることができません。そこで点検用の台車を通すためのレールを利用して、小型の巻上装置であるホイストクレーンを取り付けて資材を運搬するなど、現場でも初めてのことが多々行われました。